前回の記事で、復職に向けて通勤訓練を始めることになった話を書いた。
いよいよ、その初日である。
前日の夜。
なぜか、目が冴えて眠れない。
理由もなく、たまにこういう夜がある。
そこで思い出した。最近ジェネラリスト検定の勉強をしている。
分かることより分からないことの方が多いので、一行読むたびに眠くなる。
テキストというより、もはや子守唄だった。
「……これ、夜に試したら寝られるんじゃない?」
テキストを開く。
十分で、眠くなった。
効果は、てきめんだった。
翌朝、地下鉄に乗って会社へ向かった。
地下鉄を降りても、意外なくらい普通だった。
ところが、会社のビルが見えた瞬間だけ、
「ああ、会社だ。」
少し心拍数が上がった。
今回の通勤訓練は、人が少ない時間帯になるよう始業時間から三十分遅らせてもらっていた。
場所についてはまずは会社ではなく、喫茶店から始めることが多いらしい。
が、あいにく会社の近くにはないので、応接室を予約してもらい、そこで上長と話す予定だった。
この時間なら、あまり人にも会わないだろう。
そう思って会社に入った、その瞬間だった。
営業部長。青森時代に一緒だった、出世して部長になった仲良しMさん。課長のSさん。
それから、もう一人のOさんにロビーで遭遇。
見事に、全員知っている人だった。
私が、「お久しぶりです。」
と声をかけた瞬間、
「わぁー!」
と驚いた顔になり、
「元気?」と声をかけてくれた。
みんな予定があったので、そのまま足早に去っていった。
驚くだけ驚いて、目的地へ消えていった。
誰にも会わない作戦。開始数十秒で終了である。
応接室へ行くと、上長が
「どうだった?」
と聞いてくれた。
「いや、ちょっと聞いてくださいよ。」
通勤訓練の報告より先に、さっきの出来事を話した。
二人で大笑いしたところから、この日の通勤訓練は始まった。
その後は、最近の様子を話した。
平日はだいたい同じ時間に起きて、土日はのんびり過ごしていること。
ベガルタ仙台の観戦にも行っていること。
理由もなく眠れない夜があることも話した。
そういえば、前の日がまさにそれだった。
リワークを使わなかった理由も聞かれたが、これは前の記事に書いた通りなので、ここでは省く。
最後は、
「じゃあ、また来週やってみよう。」
ということになった。
初めての通勤訓練は、思っていたよりずっと穏やかに終わった。
……と思った。
帰ろうとしたら、また同じ四人が今度は入り口から入ってきた。
「また会った。」
嘘でしょ、と思った。まさか帰りも会うとは思っていなかった。
「お疲れ様です。」
さっきの再放送だった。三十分でまた会うなんてある?
あの四人、その間どこで何してたんだろう。
一度はエレベーターの方へ去っていったのに、Mさんが一人、戻ってきてくれた。
「元気なの? 元気なの?」
心配そうに、何度も聞いてくれた。しばらく、立ち話をした。
誰にも会わない作戦は、結局一日で二回破られた。
三十分ずらした効果は、四人には適用されなかったらしい。
帰りにまで会うとは。
今回の通勤訓練は「誰にも会わないと思ってたら四人と会った」という報告から始まったけれど、
次回は「また帰りにあの四人と会った」から始まるに決定だ。
たぶん。
ついでに気づいたこと
・G検定のテキストは、勉強道具であり睡眠導入剤でもあるらしい。
・誰にも会わないように時間をずらしても、会う人には会うものらしい。
・通勤訓練の報告より先に、事件の報告をする日もあるらしい。



コメント