※この連載、第一回から読んでいただけるとより楽しめます。
スタンプを誰かにプレゼントしようと思ったのは、
元上司の誕生日が近づいた時だった。
青森勤務時代の長で、今でも親交があるその人は、
「仕事が終われば上司も部下もない」というスタンスの人だった。
役職で呼ぶことを極力せず、みんなさん付けで呼び合う。
その文化のおかげもあって、あの頃は本当によく飲んだ。
今も定期的に会うくらい仲が続いている。
私の休職も知っている。
そんな人だから、誕生日には何か特別なものを贈りたかった。
その人はあんなに出世しているのに、筋金入りの恐妻家だ。
余談だが、出世している人ほど奥さんが強いというのは
私の中の統計としてほぼ確実になってきている。
ともあれ、本当に仲のいい夫婦なんだよなといつも思う。
だからこそスタンプの構成には私なりの戦略を練った。
「〇〇しか勝たん」「〇〇の仰せのままに」(〇〇は奥さんの名前)は必須。
同じ推しチームが好きだから似ているユニを着せたり、好きだという「競艇行こう」も入れた。
使うだろうなと吟味して選んだ言葉たちだ。
そこに遊び心で「逃走中」「やらかしたー」「もう飲めません」も追加。
どさくさに紛れて「ユイ最高!」もねじ込んだ。
完成品を渡した時の喜びようといったら。
一個一個を丁寧に見てくれて、
「絵的に好きなのはこれ」「言葉的に好きなのはこれ」と
全部に反応してくれた。
「すごい」という言葉をたくさんもらった。
次に作ったのは彼へのスタンプだ。
「ユイしか勝たん」は当然の権利として盛り込んだ。
彼には毎週月曜日、朝用と昼用のおにぎりを作って持たせている。
お昼も朝もコンビニになりがちな彼に、
せめて週明けだけでもと思って始めたことだ。
いつもお米がもちもちしていると言ってくれて、
「おにぎりおいしかった」というコメントを毎回送ってくる。
だったらそのスタンプも作ってしまおうと思った。
会社の友人にも作った。
そして母にも作った。
母のスタンプを作る時、髪の色をどうするか迷った。
今は白髪なので、そのままの色だと少し気にしているような雰囲気だった。
「白髪じゃなくてもいいんだよ」と伝えて、
金髪、茶色、黒系、グレーなどの候補を出して選んでもらった。
茶色を選んだ母のイラストは、案外似ていたらしく、
それも嬉しかったと言っていた。
できあがったスタンプを見た母の第一声は、
「まさか自分のスタンプができる日が来るなんて」だった。
「おはよう」「OK」がお気に入りらしい。
「スマホおかしい」「操作わからない」は、
使うシーンが多すぎて送られてくるたびに笑ってしまう。

「毎日ただただ見ちゃう」「全然飽きない」「本当に嬉しい」と言ってくれる。
マッサージ屋さんの担当さんのスタンプも作り終えた。
「今まで色んなスタンプ使ってたけど、
あれだけでほとんどの場面がローテできる」と言ってくれた。

そして後日、担当さんのお母さんがスタンプを買ってくれたらしい。
「お母さんが自分の『マジで?』のやつとか送ってくるんですよ」と
笑いながら話してくれた。
ちなみにLINEスタンプには公開と非公開の設定がある。 公開すると制約が厳しくなるが、 非公開にするとかなり自由に作れる。
奥さんの名前を直接入れたり、 彼の好きなキャラクターに似た着ぐるみを着せたり、 推しチームのユニフォームに寄せたデザインにしたり。 ただしロゴやチーム名は使えないので、そこは注意が必要だ。 そういうプレゼント用のスタンプは非公開にしている。
(非公開にした場合は自分が相手にプレゼントするか、一次的に公開した時に購入してもらう)
逆に担当さんのスタンプのように、 同じ名前の人なら誰でも使えるものは公開にした。 この使い分けができるのが、 プレゼント用スタンプの作りやすさに繋がっている。
元上司、彼、友人、母、担当さん。
誰かに作ってあげるたびに、同じことを思った。
こんなに喜ばれるものなんだ、と。
自分の顔がスタンプになって、誰かとの会話の中に登場する。
その体験は、もらう側にとって想像以上に特別なことらしい。
AIと散々喧嘩しながら覚えた技術が、
誰かの毎日に使われている。
【第五回へ続く】
【ついでに気づいたこと】
・プレゼント用スタンプは非公開にすると、名前や推しチームのユニフォームに寄せたデザインも入れられるらしい。
・自分の顔がスタンプになる体験は、もらう側にとって想像以上に特別らしい。渡してみて初めてわかった。
・母が「毎日ただただ見ちゃう」と言っていた。「おはよう」「OK」がお気に入りらしい。



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