前回の記事で、初めての通勤訓練に行った話を書いた。
少しずつ復職に近づいている。
そんな気持ちで迎えた、二回目の産業医面談だった。
今回もWEBでの面談である。
午後二時半。窓からの日差しが容赦なく差し込んでいた。
画面に映る私は、顔の周りだけ妙に明るい。
女優さんがインタビューを受けるときの、あの謎のライトアップである。
「……デヴィ夫人みたい。」
画面の私は、人生相談番組のゲストくらい神々しかった。
でも話す内容は、
「頭痛はどれくらいあるか」
だった。
ところが、そんな余裕は開始数分で消えた。
今回の面談は、9月の復職審査委員会に向けた確認だった。
私が提出した診断書や振り返りシートを見ながら、気になるところを一つずつ確認していく。
頭痛は今どれくらいあるか。耳鳴りはどうか。生活リズムは整っているか。
家族構成。頼れる人はいるか。親の病気や介護はあるか。
そして、休職するまでの働き方。どれくらい残業していたのか。
一年前の話を聞かれても、正直覚えていない。
そんなやり取りを何度も繰り返した。
面談というより、事情聴取である。
自白する内容が、特にないのがつらい。
もちろん必要な確認なのは分かる。
産業医は、この内容をもとに復職審査委員会へ提言をするそうだ。
だから一つひとつ確認する必要がある。
頭では理解していた。
でも、質問に答えるたびに、記憶まで一年前へ連れていかれるようだった。
さらに、こんな質問もあった。
「アサーションや認知行動療法の本を読んでみて、自分でも『ここは変えられたかもしれない』と思うことはありますか?」
私は、その瞬間、「会社だけのせいにしていると思われているのかな」と受け取ってしまった。
だから、「もっとスキルがあれば、30分かかっていた仕事も、5分や10分で終えられたのかもしれません。」
そう答えた。
その後、復職後は4時間勤務から始めて、少しずつ勤務時間を延ばしていく流れについて説明を受けた。
その話を聞いていたら、また、あの環境に戻るのかもしれない。
そう思った瞬間、頭痛に苦しんでいた頃のことが一気によみがえってきた。
気づいたら、涙が出てしまった。
この件で泣くのは、久しぶりだった。
産業医の先生も、「過去のことをたくさん思い出させてしまって、すみません」と言ってくれた。
前を向く面談のはずが、後ろばかり向いていた。
復職に向けて前を見る面談だと思っていた。
でも私にとっては、未来を見る時間ではなく、過去を何度も振り返る一時間だった。
面談の最後には、新しい宿題も出た。
行動記録表である。
一ヶ月分の私の生活が、丸裸になる。
一週間だけかと思っていたら、一ヶ月だという。
「次回の面談まで、毎日お願いします。」
とのことだった。長い。
産業医が見たいのは、何をしたかという細かい内容ではなく、ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、生活リズムが整っているかどうかだという。
それは分かる。分かるのだけれど、一か月となると話は別だ。
たぶん私は、この先もしばらく、「長いなあ。」とぶつぶつ言いながら、毎日行動記録表を書くのだと思う。
私の夏は、しばらく行動記録表と一緒に過ごすことになりそうだ。
【ついでに気づいたこと】
・WEBの画面越しなのに、妙に顔が明るく映っていた日だった。中身は重いのに、そこだけ場違いだった。
・前を向く面談のつもりが、思っていた以上に過去を振り返る時間になった。
・行動記録表、産業医が見たいのは中身より生活リズムらしい。それでも一ヶ月は長い。



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