今年のGW、いつもは日帰りの「彼の地元への帰省」に、泊まりで行くことになった。
妹さんも含めた3人旅。「楽しくなりそうだな」と思いながら出発した。
宿はGW真っ只中ということもあり、彼の地元から車で30分ほど離れたホテルを事前に確保してくれていた。
部屋の割り振りは「妹さんに1部屋、私と彼でダブルルームを1つ」になった。
普段の私なら、何も気にならなかったはずだ。
だが、今の私は違う。睡眠のリズムが不安定で、なかなか寝付けなかったり夜中に目が覚めたりする。
「すぐ寝られる彼」と「いつ眠れるか分からない私」。
この時間差がある中でのダブルルームという密室は、今の私には猛烈な不安材料だった。
22時前。案の定、運転疲れの彼は、大浴場も歯磨きも済ませ、いつでも寝られる状態で布団に潜り込んだ。
対する私は、まだお風呂にすら入っていない。
「ドライヤーとか、気にしなくていいよ」と彼は言ってくれたけれど、
寝ている彼のすぐ横でドライヤーの爆音を響かせられるほど、私は図太くできていない。
私は「ミッション」として、一人で大浴場へ向かうことにした。
あまり得意ではないのだが、この時はちょうど親子連れの団体さんと入れ違いで、洗い場に滑り込めた。
「ギリギリセーフ」と心の中でつぶやきながらミッションを遂行する。
髪もしっかり乾かして、23時前に部屋へ戻った。
そっと扉を開けると、物音で少し彼を起こしてしまった。
「大浴場に行ってきたよ」と伝えると、「あれ?そうなの」といいすぐに深い眠りの続きへ戻っていく声。
聞けば、私が不在の1時間、邪魔されることなくぐっすり眠れたらしい。
わざわざ部屋を出て良かった、とホッとした。
さて、ここからが自分の番だ。
真っ暗な部屋で、私はしばらく前に知った「認知シャッフル睡眠法」を引っ張り出してきた。
カナダのサイモン・フレーザー大学の認知科学者、リュック・ボードワン博士が考案した方法で、
私はひろゆきさんのYouTubeで知った。
やり方はシンプルだ。
まず、眠気と関係のない短い単語を一つ決める。
その一文字目から始まる言葉を、脈絡なくひたすら連想していく。
たとえば「ありがとう」なら、「あ」から始まる言葉——アイロン、あんこ、あじさい……。
思いついたら映像をぼんやり10秒ほど浮かべて、次へ。
「あ」が尽きたら「り」へ。りんご、リモコン、リス……。
これを繰り返す。
ポイントは「論理的につなげない」こと。
しりとりじゃないので、前の言葉と関係なくていい。
脳が悩み事や翌日の予定を考えようとするのを、この無脈絡な連想で強制的に遮断する、という仕組みらしい。

以前は何度か試して効いていたのだが、最近はあまり効かなくなって遠ざかっていた。
「今日のように疲れている日なら、いけるんじゃないか」と思い、もう一度試してみた。
私はそこに「ポジティブな言葉を起点にする」というアレンジを加えた。
何の言葉にしたかは……正直もう覚えていない。すでに忘れた。
たぶん「ありがとう」とか、そんな感じの少し長めの言葉だったと思う。たぶん。
映像を一つひとつ浮かべながら文字を辿っているうちに、意識がふっと途切れた。
夜中に2、3度目が覚めてしまったけれど、その都度この方法を試せばまた眠れた。
これは、すごい収穫だった。
翌朝。
ちゃんと眠れたという安心感とともに、彼と二人で朝食会場へ向かった。
そこには、自分で作る「だし茶漬け」が待っていた。
明太子、鮭、あさりの佃煮、カニフレーク、海鮮系もちらほら。薬味も色々。
好きな具材を好きなだけ乗せて、熱いだしをたっぷりかける。
これが、本当に美味しかった。
そのあとは関東方面の最終目的地へ向かいながら、途中のパーキングエリアを全部調べては寄り、
買い物しまくるという作戦を決行した。
野菜を売っている道の駅みたいなパーキングエリアがあって、トマトもお花も安かった。
そして——そら豆があった。
2人とも大好きなそら豆が、大量に入って400円か500円くらいで売っていた。
そら豆は、蒸し器で3分弱蒸すだけで驚くほど甘くなる。
いつもそうしているから、買うのなんて全然苦じゃないはずだった。
なのにその日の私は「疲れて帰るから料理しないだろうな」という謎の判断で、棚に戻した。
今もスーパーでそら豆を見るたびに思い出す。
買えばよかった。
それだけが、心残りだ。
【ついでに気づいたこと】
・認知シャッフル睡眠法は、脳が悩み事を考えようとするのを無脈絡な連想で遮断するらしい。論理的につなげないのがポイントだと思う。
・「気にしなくていいよ」と言われても、寝ている人の横でドライヤーをかけられる人間に私はなれなかった。大浴場に行って正解だったと思う。
・「疲れて帰るから料理しないだろう」という判断でそら豆を棚に戻した。今も後悔している。



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