前回、自分の方向音痴について書いたが、続きがある。
方向音痴というものは、一人でいる時はただの迷子だが、
集まると妙な連帯感が生まれる。
昔、職場の4人で山形県の加茂水族館へ出かけた時のことだ。
生まれつき方向感覚が備わっているらしい強者が1人。
私を含む、同じ匂いのする方向音痴が3人。
その3人の中には、後に一緒に仕事で迷子になる後輩の男の子も混ざっていた。
帰りのルートを相談している際、誰かが「来た道を戻ればいい」と正論を吐いた。
私は反射的に返した。
「でもさ、来た道って戻るのって難しいよね」
方向音痴の3人が即座に反応した。
「わかる」「無理だよね」「景色違うし」
対して、方向感覚のある彼は本気で絶望した顔で言い放った。
「いや、来た道戻るだけっすよ? え、俺が少数派なの?」
その後、彼は「逆にするだけじゃないですか、鳥瞰図で見ればわかりますよ」とも言った。
3人の答えは一致していた。
それができないんだよ。景色が違うんだもん。
そもそも私たち、鳥じゃないし。
3対1である。その日、正しい方が異分子だった。
この後輩の男の子と二人で、車で客先へ向かうことになった時のことだ。
「私たち二人で、マジで大丈夫かな」と不安に震える車内で、私は一つの理論をぶち上げた。
「マイナスとマイナスを掛ければ、プラスになるんじゃない?」
そのまま車を走らせた結果、私たちはなぜか定刻通りに目的地のドアを叩いていた。
職場に戻り「ちゃんと着いたよ!」と報告した際の、「おお、よくやった!」という称賛。
私の方向音痴は職場でかなり有名だったので、大人が車で目的地に着いただけでこれほど褒められた。
悪くない気分だった。
一方で、世の中には上には上がいる。
別の後輩の女の子を車に乗せた時のこと。
私がナビをセットしようとすると、彼女が宣言した。
「運転に集中してください!私が携帯でナビしますから!」
頼もしいと思って任せた。
途中から「ここ本当に合ってる?」「こんな道通ったっけ?」という不安がよぎったが、
彼女は「大丈夫です、このまま進んでください」と一切揺るがなかった。
そして私たちは、川に突き当たった。
行き止まりである。
一瞬、車内がシーンとなった。
その後、大爆笑した。
漫画でよくあるやつが、リアルに起きた。
結局その後は私がナビをセットし直し、文明の利器を頼りに無事生還した。
今でも私は、一度通っただけの道を「初めまして」の顔で眺めている。
まあいい。ナビがある。
【ついでに気づいたこと】
・方向音痴が集まると「来た道を戻るのが難しい」で即座に意見が一致するらしい。方向感覚のある人には本気で信じてもらえない。
・方向音痴同士でナビなしで車を出して、なぜか定刻通りに着いた。マイナスとマイナスがプラスになったらしい。
・自信満々なナビが必ずしも正しいとは限らないらしい。川に突き当たって学んだ。


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