メルカリに赤い服を出品しようと、写真を撮っていた。
「そういえば、この服もよく着たな。」
気づけばクローゼットには赤い服が何枚もある。
私は昔から、気合いを入れたい日に赤を選びがちだ。
……待てよ。
赤って、私以外のところでも、ずいぶん働いていないか。
信号では「止まれ」と言われる。遠くからでも一番目立つ色だからだそうだ。
セールでは、値札やチラシの色に使われる。理由はまた同じ、目に飛び込みやすいからだった。
対戦スポーツでは、赤いユニフォームの方が勝率が高いというデータまである。
恋愛では勝負服になり、
神社では邪気払いまで任されている。
赤本人に話を聞いたら、
「今日は休ませてください」と言うかもしれない。
もともと色の話には目がない。
というわけで、改めて赤という色を調べてみた。
赤は、火や太陽、血を連想させることから、昔から生命力や情熱、エネルギーの象徴とされてきた。肩書きが多すぎて、名刺に入りきらない。
日本でも神社の鳥居は鮮やかな朱色だ。
魔除けの意味があるとされ、昔から大切に使われてきた。
そういえば、還暦になると、赤いちゃんちゃんこを着せられる。
由来を調べたら、還暦は干支が一周して、生まれた年に戻ることらしい。つまり「もう一回赤ちゃんからやり直せ」ということだ。おまけに赤には魔除けの力があるとされていて、大昔は赤ちゃんに赤い産着を着せて厄除けをしていたらしい。その名残が、還暦の赤いちゃんちゃんこなんだそうだ。
六十年かけて積み上げてきたキャリアも貫禄も、還暦の日には一旦リセットされ、強制的に振り出しに戻される。しかも本人の希望は聞かれない。
色彩心理学でも、赤は活動的、情熱的、力強い印象を与えやすいとする研究がある。
また、赤い服が魅力的な印象につながる可能性を示した研究もある。気づけば、恋愛方面にも出向している。
もちろん、色の感じ方には個人差があるし、研究結果もすべてが同じ結論ではない。
それでも、世界中で長い間、「ここぞ」という場面で赤が選ばれ続けてきたことは事実だ。
実は、赤を着ると顔色がよく見える気がしている。
それに、赤が似合っている人を見ると、単純にかっこいいと思う。
だから秋冬は、赤い服を気に入って何度も着ている。
「赤を着れば、うまくいく。」
そんな魔法ではない。
でも、鏡の中の自分が、ちょっとだけ気に入る。
私はその感覚を、結構信じている。
とはいえ、今そのうちの一枚をメルカリで売りに出している。
気に入って何度も着ていたはずなのに、気づけば同じような赤が増えすぎた。
断捨離の前では、赤の効果も形無しである。
そんな日、赤はまた駆り出される。
今日も出動、ご苦労なことである。
赤だけでこれなら、青や黄色は何を担当しているのだろう。
色の世界の勤務表を、一度見てみたい。
ついでに気づいたこと
・赤は「止まれ」「セール」「勝負服」と、一人で何役もこなしている。理由を聞けば、だいたい「目立つから」だった。
・神社では魔除け、還暦では赤ちゃんに逆戻り。仕事内容が幅広すぎる。
・赤の効果を結構信じているはずなのに、増えすぎた赤い服は普通に手放している。



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